井上くんにも傘を

 

 

たまには少し地蔵の話をしようか。

地蔵界隈に名を連ねる者の端くれとして、

いつかは話しておかねばならなかった。

こんなイントロにて、今宵も始まる無駄話。

 

 

 

 

登紀子調にて切り出してはみたものの、

特に地蔵に思い入れがある訳では無い。

が、見かけると何だか目をやってしまう。

笠地蔵が大好きなお伽話だったからか?

この季節には特に読み返してみたくなる。

 

 

 

 

笠地蔵のストーリーは至ってシンプル。

 

壱)爺さん、婆さん素敵な正月過ごしたい。

弐)爺さん、笠作って売ろう、売れず。

参)帰り道、雪に打たれた地蔵様、可愛そう。

四)せめて笠をどうぞ、婆さんに事情説明。

五)ゴメン、婆さん売れなく地蔵様にやった

六)それは良いことしましたね、爺様。

七)地蔵、ご馳走、宝物どっさり、恩返し。

 

たった7行で完結。

 

 

 

 

冒険活劇でもなく英雄譚でもなし。

地味な印象拭えぬ、笠地蔵。

多分、お伽話ランキングでも12位くらい。

そんな控え目なお話がお気に入り。

大切な事、教えてくれたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

童話や寓話、お伽話には往々にして

教訓や裏の意味が秘められていることが多い。

善行や悪行は自分の身に帰ってくるだとか

欲深さは身を滅ぼす元凶だとか。

 

 

 

 

笠地蔵は何を教えてくれたのだろう。

情けは人の為ならず?

善行は返ってくるもの?

違う、そんなことじゃないはずだ。

この物語が僕らに伝えたかったことは。

 

 

 

 

笠地蔵、それは愛に纏わる物語。

各シーンには色々な形の愛が

それとなく描写されている。

愛とは何ぞや?僕らに問ふ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爺さん、思う。

少ない稼ぎで申し訳ない。

せめて記念日くらいはと奮闘するも

結果出せず。

 

相手を思い行動する、愛の基本。

 

 

 

 

しょぼくれた帰り道、風雪に凍える地蔵に

自分の姿を重ね見る。

「今はこれが精一杯。」ルパン気取って

ささやかな優しさを笠に込める。

 

袖すり合うも多少の縁、博愛。

 

 

 

 

婆さんに報告。「ゴメン、売れなかった。」

婆さん、責めも罵倒もせず。

労いの言葉に加え、爺さんの善行を褒める。

「それは良いことをしましたね。」

 

結果よりも気持ちを慮るかの如き慈愛

 

 

 

 

「・・・・婆さん」

「はい、お爺さん。」

手を取り、見つめ合う二人。

BGMは勿論、冬ソナ。♬よーもにー♬

お互いに分かっていた、通じ合っていた。 

 

 

婆さんの喜ぶ顔が見たいから、

頑張った爺さんの気持ちが痛いほど伝わる。

嬉しくて嬉しくて、

隙間風のせいじゃないわ、西野風に震える。

 

 

駄目な男のカラ回り、

結果よりも気持ちを受け取ってくれた、

そればかりか自分でも気付かぬ様な

小さな良いとこ見つけてくれた。

健気な婆さんからの優しい一言が染みる。

 

 

相手の気持ちを理解し、受け止め、

そして答える。これぞ正に相思相愛。

 

 

 

 

 

婆さんからの暖かな労いの言葉、

これでやらねば、漢が廃る。

こんな良い女、絶対に幸せにしなければ。

爺さん奮起し、家庭は裕福になる。

地蔵がご馳走や宝を届けた場面は

単なるメタファー。これが笠地蔵の真実。

二人は末永く幸せに暮らしたそうな。

 

 

めでたし、めでたし。

 

 

 

 

 

 

 

愛に纏わる教訓を伝える笠地蔵。

ある文献によると、このお話の正式名称は

「相思相愛笠地蔵」。略して相愛笠。

後の相合傘の語源となったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

嘘だけど、も一つ、めでたし、めでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、ここまでは爺さん目線の解釈。

婆さんサイドから、穿った角度で読み解けば

「上手な男の転がし方〜否定より褒めろ〜」

女性誌表紙のコピーが浮かぶ。

 

 

 

 

女性の方が一枚上手は今も昔も変わらず。

掌の中でコロコロ、コロコロ。

転がされるのも、悪くはない。

それも一つの愛の形か、と丸く収める。

 

 

 

という訳で、

やっぱり、めでたし、めでたし。

 

 

 

 

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