毛虫の夢

 

 


自由な休日へ向けたささやかな準備に充てた休日。
車内の清掃、積んでおくCDのチョイス。
面倒くささがやる気と肩を並べるまで洗車。

 


飛沫のリズムに合わせて
陽気な日差しがメロディーを乗せる。
愛車とホースの丁度真ん中に小さな虹。

 


ウォークマンのスイッチをオンに。
イヤホン越しにスピッツが唄い出す。
“猫になりたい”

 


穏やかな一日の始まりだ。

 

 

 

 

 

 


「鳥になって大空を飛び回りたい」
「イルカのように大海を自由に泳ぎたい」
「もしライオンだったら大草原を駆け巡りたい」
空を見上げ、海原を眺め、地平線に思いを馳せる。

 


こんな夢物語染みた願望を抱いたこと、
一度くらいあるだろう。
しかし、実際になれたとしたら、
そこまで考えてみたことはあるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 


●ライオンになれたら

百獣の王と謳われるライオン、
特にオスは悠々自適、まさにサバンナの王様。
青い空、どこまでも続く地平線。
すべてが自分の王国だ。

 

プライドには雌ライオンを侍らし
狩りは雌に任せる。ダメ男の理想像。
King of ヒモ生活。

 

しかしながら甘い話には裏がある。
「狩りは雌に!」そんな謳い文句は間違い。
いざ、大型動物の狩りにはオスが出勤する。

 

寿命は約20年と短く、
さらにプライドをかけたオス同士のバトル、
ボス交代時の子殺し。
王様に課せられる生存競争は想像以上に厳しい。
トラじゃないのに男はつらいよ

 

 

 

 

 

 

●イルカになって大海原を

夕日が沈む水平線を踊るように跳ねる。
ラッセンの一枚を切り取った世界にて
大海原を自由に遊ぶ。

 

食事は常にヴァイキング、新鮮な魚介類。
群れを作りコミュニケーションも取れる、
人間からも愛され孤独を感じることはない。

 

反面、社会、群れに付き物の闇からは
自由に泳ぐイルカとは言え逃れられない。
同族イジメや餌の弄び、仮面の下には歪な笑顔。

 

脳を半分づつ眠らせながら泳ぎつづけるのも
IT土方に負けず劣らずブラック臭がする。
Everyday is the Death March.

 

 

 

 

●あの大空を舞う鳥になれたら

風に乗り雲を越え、
しがらみや国境のない空をどこまでも羽ばたく。
季節風に翼を滑らせ世界中を旅する。

 


体のサイズに反比例して一様に鳥類の寿命は短い。
猛禽類のヒナは親が運ぶ餌が少なければ
兄弟同士で殺し合いを行う。

 

梟以外は鳥目、
夜遊びの一つも出来やしない。
毎晩、自粛を強いられるのは遊び人にはちと辛い。

 

 

 

 

 

 

憧れだけで変化を望むことはリスキーだ。
まばゆい光の陰には必ず暗い一面も隠れている。
目を細めた羨望の眼差しでは見逃してしまう。

 


就職や結婚にも同じことが言えるだろう。
よく調べ、深く知ることで納得のいく
失敗が少ない人生を選べるのだろう。

 

 

「無駄だなー」と思うかもしれないけれど
就職活動時の業界研究はとっても大事なんだよ。
新卒時に大失敗をした僕が言うのだから
間違いないさ。

 

 

厳しい状況下で闘う就活生へ、僕なりのエール。

 

 

 

 

 

 

 

 


洗車を終えてふと一息つくと
イヤホンからはハイロウズ
“十四才”が流れ出す。

 


失敗だらけの人生だろうが
辛い旅路であったとしても
それがもし、
揺るぎない憧れに導かれた道ならば

 

それはそれで
とても素敵なことなんだろう。
そうだろ?ジョナサン。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもの妄想に耽りながら軽く伸びをする。
庭木の若葉にて木漏れ日の下
毛虫が一匹、優雅にランチタイム。

 


今日の話相手は君だけだ、
今回の戯言を評価してくれないか?可?不可?
聞こえぬはずの笑い声がかぷかぷと響く。

 


平坦な毎日、盛り上がらぬ文章、
これぞ正しく、やまなし。

 

 

 

 

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