あの日ソナタ ~第18番いつも単調~

 

 

 

 

昔々あるところに・・・・
昔話の始まりは決まってこうだ。

 


ストーリーを膨らませたり、
お話の教訓を深読みしたりと、
いつもの昔話弄りは今日はお休み。
イントロに釣り合わぬエンディング故。

 


両手の指に収まる位の昔加減。
あるところと暈すのは個人情報保護。
あらすじは月並みな別れのお話。
結末は勿論、バッドエンド。

 

 

 

 

 

 

 


また5月がやってきた。
清々しいはずの五月晴れ、前途を祝う鯉のぼり。
それなのに想起さるるは最後の言葉、君の声。
この時期になるとどうしても思い出してしまう。

 

 

送辞、遺言、手紙の結び、そして別れの言葉。
最後に受け止めた音はいつだって残響を伴い
耳の奥にひっそりと居座り続けるものだ。
その内容の如何に関わらず。
そして、ふとした瞬間に顔を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方も少しはプリンを見習ったらどうなの?」

玄関のドアが軋み、君の言葉の残響を上書きする。
それが君と交わした最後の会話。
閉まるドア、締まらない結末。

 


ユーモアを愛していた君からの言葉でも
このセリフの真意を理解するのには
少々、骨が折れる。

 


とはいえ大切に想っていた人からの言葉、
例え、どんな言葉であろうとも
その真意を理解しようとすることは必要だ。
それが最後の言葉であるのならば尚更だ。

 

 

さて、一つ一つ紐解いていくとするか。

 

 

「見習え」という位であるならば
プリンという存在は優れた存在であるはず。
確かに老若男女問わず人気があるのは認める。
人々を魅了する要素とは一体何なんだろう?

 

 

 

 

 


・甘い

スイーツなら当たり前、マサオ。
人は甘味を感じると多幸感に包まれる。
しかし、甘いだけならチョコに飴、他にもある。
プリンの甘味が優れているのは、程良さだ。


過ぎず少なからず、
最後の一抄いまで飽きさせず
魅了し続ける絶妙な匙加減。
恋愛関係においても同じことだろう?

 

 

 

 


・口当たりが良い

口の中でとろける滑らかな舌触り、
流れゆく絹の様な喉越し。
虫歯や咽頭痛時には最良の友だ。


弱った時にそっと傍に居てくれる。
噛み砕く必要もなく、飲み込む必要もない。
受け入れやすいありのままの姿。


自然体で付き合える存在は希少だ。

 

 

 

 


・何色にも染まる

カスタードにミルク、チョにイチゴ。
カボチャに至るまで。自分の個性を失わず
相手の良さを引き出し見事な調和を奏でる。
協調性と柔軟性を兼ね備えた懐の深さが素晴らしい。

 

 

 

 


・ほろ苦い

カラメルソースのほろ苦さが
甘さをより引き立たせる。
西日射す窓際で一瞬浮かぶ憂いを帯びた表情、
その残影がいつもの笑顔をより際立たせる。


人生には少し悲しい過去といった
アクセントも必要悪だ。

 

 

 

 


・時にプッチン

優しさの影に隠れた男の怒りは
大切なものを守る為にある。
拳を握りしめ、立ち向かえ、今がその時だ。


お前は一線を越えてしまった。
堪忍袋が切れた音に震えていろ、
その白い皿の上でな。プッチン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうか、プリンという存在は
女性が望む理想の男性像を備えているんだね。
君からの最後の言葉の真意は
「そんないい男になってね、サヨナラ。」
今、やっと解ったよ、ありがとう。

 


・・・都合よく思い込もうとしても無理。
知ってる、知ってます、存じております。
こういう風に深読みばかりする男が本当は
面倒くさかっただけ、それだけだと。

 


ユーモア染みた別れの言葉で幕を閉じた辺りに
君からの優しさを感じる。
最後に一つだけ、少しだけ
強がりを言わせて貰えるのならば・・・・

 


「貴方」を「そなた」
と言い換えなかったのは減点1。
おじゃる丸フリークだったらそこは拘ろうよ。

 

 

 

 

 

 

 

 


食後のデザートを物色している時に
不意にフラッシュバックしてきたのは
甘い記憶と苦い思い出。

 


青葉の頃、君の言葉をホロリ紐解き
プリンとカラメルソース、一掬い口に運ぶ。
「おいしい」の代わりに「サヨナラ」と呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 


<このお話の教訓>
冷蔵庫の中のプリンを勝手に食べるのは止めましょう。
ささいなキッカケが喧嘩の原因になりえます。
アンラッキーカラーは勿論、パールイエロー。

 

 

 

 

 

 

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