カボチャの馬車~2019年製 Jack-O'-Lantern Model~

断り切れず嫌々ながら参加した飲み会。
愛想笑いを作り、話を適当に合わせ、
時間が過ぎるのをただ待つ。
ワタシ  ハ  ハヤク  カエリタイノダ。

 

 

 

「12時になる前には帰らなきゃ
           魔法が解けてしまうわ。」
28cmのガラスの靴では即、不燃ゴミ行き。
いくら心優しい王子様だって見て見ぬフリ。

 

 


まあ、魔法が解けたとこで柔和なオジさんが
毒吐きマシーンに戻るだけなんだが、
作り上げてきたイメージってものがある。
穏便にこの場を切り抜けることに
こしたことはない。

 

 

 


早くお開きにせいオーラを全開にしている
にも関わらず、お調子者の若い子が
どうでもいい話題を振り続け、
宴はダラダラと続いていく。

 

 

 


チョット、あなたよく見なさい?
あなたが長々と話かけている
目の前のオジさんのお顔を。
愛想笑いは消え、無表情。
その目は既に死んでルラ。

 

 


ほぼ「うん」「そうだね」「すごいね」
の3語しか返していないのにも
関わらず話は止まる気配なく、
むしろ勢いを増すばかり。

 

 

 

というよりもよくこの返しだけで
会話として成り立つもんだ、
変なところで妙に感心してしまった。

「ラブソングを歌うには
              3コードもあれば十分だ。」

この格言もあながち間違いじゃないみたい。

 

 

 

「〇〇さんの好きなタイプはー?」
疲れきっているところに
お決まりのウンザリ質問。

 

 

 

「物静かでちゃんと敬語使えて
      尚且つ表情読める子かな」

喉まで出かかったがセーフ。
終電前につき魔法の効果はまだ有効。
適当な名前を挙げ切り抜ける。

 

 

 

大体にしてこの手の質問は
あまり好きじゃない。

 

 


人を単純な形にカテゴライズ
するのは嫌いだし、
マトモに答えようとしたら
一言では伝えにくくないかい?

 

 

 

感性の問題を言語化して
伝えることは非常に難しい。

 

 


私がよく使う方法は
シチュエーションを説明し
「って感じ。解る?」
と同意を求めるという方法。
成功率は今のとこ30%弱ってとこ。

 

 

 

 

 

先程の「好きなタイプ」を例に挙げて
実践してみるとしようか。

 

 

 

①病院にて予防接種終了後
    ナースさんとのやりとり。

 

ナ「はい、終わりましたよー。」
私「今日ってお風呂はOK?」
ナ「大丈夫ですよー。」
私「じゃあお酒は?」
ナ「いいですよー^_^」
私「ではご一緒にいかが?」
ナ「ハハハ、お大事にー^_^」

 

こういうリズムよく上手な返しが出来る人。
分かる?

 

 

 

②小学三年生の時、隣の席の女の子。
     いつも何か歌っていた。
     誰に聞かせる訳でもなく、口ずさむ。
     それも楽しそうに。生活の中に
     歌があることが、さも自然なことで
     あるかの様に歌っている。
     当時は変な奴だなー、と思いながら
     見ていると偶に目が合うことがあった。
     そんな時でもニコッと微笑みながら
     歌っていた。

 

こんな感じの女の子に惹かれる、解る?

 

 

 

 

・・・ゴメン。オジさんが間違ってたよ。
改めて文章にしてみて分かった。

 

 


メンドくせー。

 

 


そりゃ、飲みの席でこんなん
長々話してたらドン引きだよね。
軽く返すのが正解だよね、君の勝ち。

 

 

 

 

・・・いや、待てよ。
あえて長々語ることで場を白けさせ、
じゃあお開きね、っていうパターンが
あったのではないだろうか?

 

 

 

 

そうすれば、
もう酔えば勝ちだとしこたま飲み続け、
トイレに向かう途中でブッ倒れ
店員さんに介抱される。
ようやく辿り着いたトイレでは
延々とマーライオン
こんな失態を晒すことはなかったのでは?

 

 

 


試合に負けて勝負にも負けた感が拭えない。
同じ負けでも、次回は不戦敗を選択しよう。
オジさんのガラスのハートと
ガラスの肝臓にはヒビが入ったままだから。

 

 

 

 

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