21 Ramblin' Gambler's Blues

「ギャンブラーに共通することが一つある。

 彼らは一様に死にたがっているのさ。」

 

 

 ラリーの言葉通りなのかもしれない。

幸せを渇望しているフリをしながら

心のどこかで最期の時を手繰り寄せようと

必死になっている。

 

 

 

中途半端に手が入るものだから

勝負を降りるわけにはいかなくなる。

耳元で囁くのは決まって鎌にフードの扮装。

 残されたチップは己が命のみ。

 

 

 

焦りは冷静な思考と視野を奪っていく。

故に永遠に気が付けないのだ。

手の中のA&Jさえも幻想に過ぎないことに。

そんな愚者の汚れ切った掌では

女神の右手を握り占めることは叶わない。

 

 

 

 

 

終了~。マーロウ風に言うのなら、

「ハードボイルド気取るには早すぎる。」

所詮、半熟英雄どまり。英雄でもないけど。

ゲーム自体は未プレイだがこの言葉は好き。

 

 

 

そんな半熟真っ只中の高校時代。

僕のクラスはちょっとした賭場と化していた。

胴元は誰だー、はい、自首します、僕です。

もうとっくに時効だからいいかな。

 

 

 

 

 

 

 

キッカケは中学時代に読んだ

阿佐田先生の”麻雀放浪記

ピカレスク・ロマンの教科書。

戦後を駆け抜けた漢達の後ろ姿に憧れた。

 

 

 

中学生の頃には牌を握り始めたものの

当然の如く、同年代で打てる人間など極少数。

今と違いネット麻雀など無い時代。

卓を囲むことに飢えていた。

 

 

 

高校に上がると事態は一変する。

同士が沢山いるではないか。

さらに嬉しいことに皆一様に

かなりの猛者ばかりだった。

 

 

 

家から牌とマットを持ち込み

昼休憩の時間に卓を囲む。

も、すぐさま教師陣の知るところとなり御用。

 「もう教室に麻雀牌は持ち込みません」

停学こそ免れたものの反省文を一筆書かされる。

 

 

 

それはそれ、これはこれ。

「後悔はするけど反省はしない」を

信条とするBorn to be ダメ人間。

 どうしたものかと悪知恵タイム。

 

 

 

ポクポクポク、チーン!

「牌がダメならカードがあるじゃない」

僕の中の悪休さんがアントワネット調に囁く。

カード麻雀を持ち込み雀荘Dの営業再開だ。

 

 

 

最初は少数から始めた麻雀だったが

徐々にギャラリーは増加し、

クラスの半数以上がお客さんとなるのに

時間は掛からなかった。

 

 

 

ブームは加速し麻雀だけでは飽き足らず、

トランプ、サイコロも導入されていく。

IR法案成立を待たずして賭場は拡大の一途をたどる。

カジノ3-7へようこそ!

 

 

 

 

バニーがいないのは残念だけど

そこは大目に見て下さい。

だって、いたらいたで大変だよ?

ウチ男子校だから。

 

 

 

 

昼休

       ↓

BJポーカーチンチロ麻雀

これが僕らの時間割。さしずめアウトロー養成学校。

 

 

 

 

毎日繰り広げられる勝負の場にて

養われるは勝負勘。呼吸、掛け合い、表情読み。

教科書よりも大事な物を学べた気がする。

 物は言いようとは良く言うでしょ?

 

 

 

 

盛者必衰の理をあらわす。

楽しい時間も永遠ではないのだ。

受験シーズンも佳境に入り

カジノ3-7も閉店を余儀なくされた。

 

 

 

 

大学に入り麻雀にハマり、身持ちを崩す。

この時代を経てきたおかげか

あの頃の仲間でそんなヤツはいなかった。

逆に止めたヤツの方が多いじゃないかな?

 

 

 

 

僕自身も大学に入ってからは

付き合い程度でしか打ったことはない。

周りとのレベル差に興冷めしてしまったのだ。

 

 

 

高校時代の仲間は贔屓目なしで

プロクラスの腕を持っていたから

覚えたての小僧と卓を囲むのは

退屈以外の何物でもなかったのだ。

 

 

 

 

あの頃の仲間とは音信不通になってしまったが

もし、会うことがあるとすれば、

あの教室で再会、いや再開したい。カジノ3-7を。

バニーガールの手配はしておくから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大人になる前の半熟期間。

高校生ってのは少し背伸びをしたがるもの。

僕らの場合、視線の先に映った後ろ姿が

ロックスターやスポーツ選手じゃなくて

ピカレスク小説の主人公だったってだけのお話。

 

 

 

 

まあ、ガキの頃からこんなことばっかり

やってると碌な大人にゃなる訳ない、

良いサンプルが僕自身。

 

 

 

今の僕の持ち札はAと8のツーペア。

常にワイルド・ビルの影が付きまとう。

僕が求めているのはAじゃない。

心優しい Queen of Heart。

 

 

 

追いかけるならバニーの尻より白兎。

不思議の国へFull Ahead !

ハートの女王にNice to meet you!

 

 

 

バクチ繋がりでクレイジー・バーツの

名台詞をもじって締め!