ジョナサンの翼

始まりは一通のメールからだった。

日常のくだらないやり取りを

少しだけ色付けして書いたメールに対する返信。

アイツにとってみりゃ何の気も無しに

書いた一文であったのだろう。

 

 

 

「いや~Dの書く文章は温かくていいね~。

           Dの文章好きだよ。」

 

 

 

今、思い出してみても何てことない一文なのに、

何故だか僕の心に刺さってしまい、

文章を綴ることが好きになったんだ。

  

 

 

乗せられやすい性格とおだてに弱い単純さ、

こう言われてしまえば返す言葉もないが

何気ない一言に人を動かす力を与えたのは

誰が発した言葉なのかによるところが大きい。

 

 

 

 適当な事は言うが、嘘はつかない。

自分の思ったことは素直に伝える裏表の無い性格。

細かいことはどうでもいいが、お互いの本質を良く

知り尽くしている親友からの言葉だったからだ。

 

 

 

文筆業になるという目標を持ち、

夢へ向けての努力を怠らず実現させた

親友でもあるが心より尊敬出来る人物。

 

 

 

単純にすごく嬉しかったことを憶えている。

そんな尊敬する人から掛けられた言葉だったから。

 

 

 

面と向かってこの事を伝えたことは一度もなかった。

他の事に関する感謝は伝えることが出来ていたのに。

 

 

アイツにとってみりゃ

ホントに何の気も無い言葉だったのに対し、

自分がすごく嬉しく感じてしまったという

アンバランスな状況に、感謝の気持ちを伝えたら

どこか気恥ずかしいと思っていたのだろう。

 

 

 

 

それだけではないのかもしれない。

口下手な僕には上手く気持ちを表現することが

出来なかったからかも。

 

 

 

大事なことだからこそ伝えなきゃいけないけど、

大切な感情こそ言葉に変換し難いものだから。

 

 

 

今でも書くことが好きで

下手くそな文章を綴っている。

こんな文章でも気に入ってくれる人もいるんだ。

それに自分の感情を口で発することが

苦手な僕にとって考えや気持ちを

整理して伝えることの出来る文章ってやつは

どうやら性にあっているみたいだ。

おかげで様でなんやかんや色んな場面で

助けられているよ。

 

 

 

 

きっかけは君がくれた何気ない一言。

でもそんな一言が僕の人生に一片の彩りを

与えてくれたんだ。

 

 

感謝の気持ちを最後に綴って

締めくくろうとも思ったけれど、

それは止めておこう。

 

 

いつかまた会うことがあったのなら、

足しげく通った居酒屋に行ってみよう。

昔話と近況報告、生え際頭皮チェックを肴に

一杯酌み交わそうではないか。

 

 

その時は口下手ながらも感謝の気持ちを伝えるよ。

上手く喋れないと思うから半分寝ながら聞いてくれ。

その方がこっ恥ずかしくなくていいから。

まあ、赤面してても酒のせいだと誤魔化せるしな。

 

 

それがオッサンのスタイルってもんだろう?

 

 

 

 

  

 

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