Sweet Memories
一通の切手の無い封筒が僕の元に届いた。
今まで僕が君にしてきた仕打ちを考えれば、
綴られている内容なんて封を切らなくても
容易に想像できてしまう。
君の素振りが変わってしまったことに兆候が
無かった訳ではない。本当のことを知るのが
怖くてずっと目を背けていただけなんだ。
「あの頃に戻れたのならば・・・」
後悔と自責の念に苛まれながらも、
甘美なる時間への追憶は止まらない。
若さゆえの過ちに満ちた日々、
本能の赴くまま刹那的に過ごした夜。
この現状を招いた元凶となっている
であろう行いすら愛しく感じる。
時の流れはどんなに些細な思い出さえも
ルネサンス期の巨匠が如く
一枚の芸術作品に仕上げてしまう。
その美しさは存在するはずも無い希望を
愚かな男に抱かせてしまった。
もしも君が僕を許してくれるのならば、
あの日のように夕日が映える海辺のレストランで
生まれ年のヴィンテージを開けるとしよう。
これまで一緒に歩んでくれたことへの感謝と
これからも宜しくという気持ちを込めて。
一欠けらの淡い期待と共に封を切る。
尿糖(++)
赤いスイトピー宜しく甘いsweet pie
予約先はもちろん思い出のレストランではなく内科に変更。