Wash under the Rainbow

 

 

 

 

 

 


冬の面影が朧気な記憶に変わっていた若葉の頃
暖かな日差しの下 背筋の伸びた物干し竿
無機質な洗剤の芳香 ダラダラと回る洗濯機
やる気のない音が面倒くさそうに響く

 


ドラム式の槽内を 泡沫にまみれたシャツが回る
グルグル グルグル 変わらぬリズムで。
昼夜問わずに染みついた 汚れちまった悲しみを
知らず知らずに 洗い流していく。

 


予定も約束もない せっかくの休日だ
せめて汚れ物の山ぐらいは片付けよう
今日は絶好の洗濯日和なんだから
積もり積もった問題は後回しにするとしても

 

 

 

 

 

 

 

 

「命の洗濯」と「命の選択」
字面は違えど どちらも

   "Life Triage"  

Lifeの意味を
「人生」と訳そうが 「生命」と読もうが
ある意味 同じことだろう
選別ではない ましてや餞別でもない 選択だ

 

 

羽を伸ばしている時にだけ
初めて知覚出来ることがある。
ストレスで曇った視界を
開放感に満ちた風が拭い去る。

 


「このままでいいのだろうか?」

 


失くしたはずの選択肢が眼前に広がる。
年齢を重ねれば重ねる程に
狭まっていく選択肢に手を伸ばす。
その代償は決して小さくはない。

 

 

時にその対価として残りの人生すら
求められることもある。
それでも、例え短い時間であったとしても
心より望むモノへの道が開けるのなら?

 

 

凝り固まった頭では重大な決断を下せない。
リラックスという名の柔軟剤で思考を解す。
パサついた心に乾燥機は不要、
必要なのは潤いある時間。
そう、本当の意味での休日、心よりの休息だ。

 

 

自粛の雨が上がったら 虹色の空の下
存分に羽を伸ばすこととしよう。
最後の選択肢が霞んで消える その前に
命の洗濯 天使の休息 久松史奈

 

 

 

 

 

 

 

 

背中の羽を拡げてみれば
残念ながらデビル・ウィング。
今日も風さえ吹きすぎて
行きつくとこは何処へやら。

 

 

 遠くへ飛べず 高くも飛べず

言葉遊びの空を ひたすたに揺蕩うだけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

汚れちまった悲しみをどうこうする前に
汚れ切った汗ジミをどうにかしなくては。
今日も今日とて午前2時 
コインランドリーへと車を走らせよう。

 


ポケットの中身は小銭と3、40分。
不幸が好きなバカにだけはなりたくない、
そう、思いながら 回るドラムを眺めるる。
何望むなく 願ふなく。

 

 

 

 

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