27clubへようこそ！
十字路にて悪魔と取引した。
命を差し出す対価として得たものが
神懸ったプレイとは随分な皮肉だ。
もし目の前に、黒猫を従えた彼の悪魔が現れ
取引を持ちかけてきたらどうする？
「お前の寿命を残り1年とする代償に
望むような旋律を奏でられるようにしてやる。」
答えは決まっている、即答だ。
むしろ喰い気味に、前のめりで、被せて言う。
僕「よろこんでー！」
猫「魂一丁入りましたー！」
悪「いやちょっと・・そんな大衆居酒屋的に
言われても・・いいの？寿命もらうよ？
マジだよ、ラス1年って解ってんの？
もう少し躊躇とかしたほう良くない？
大事なことってさ、そんな早く結論
出すもんじゃないと思うんだけど・・」
僕「聞きました？猫さん。ずいぶん慎重な方ですね。」
猫「そうなんですよ～。よく言えば慎重派。
悪く言えばヘタレ野郎なんんですよ。
そのせいで何度フラグをへし折ってきたことか、
ほんっと我が主ながら情けない・・」
悪「・・・ってめー、
下僕のクセしてなんてことを言っ・・
僕「そんな慎重派のアナタ。いいんですか？
このチャンスを逃していいんですか？」
猫「ほう、チャンスとは僕さん？
ちょっと聞き逃せないですなー。」
僕「なんと今だけ、今だけですよ。
この場にてお取引頂ければ、
通常、残り1年、365日のところを
・・・残り300日にサービスいたします！」
悪「どこのTVショッピ・・
猫「エッー！いいんですか？
そんな大盤振る舞いしても。
2ヶ月以上も減るんですよ？
サービスしすぎじゃないんですか？」
僕「ええ、おっしゃるとおりです。
正直いって痛い。非常につらい。
2ヶ月あれば色々なことができますからね。
極悪人である僕にとって悪魔様は
大変なお得意様ですから、今回に限り
出血大サービスならぬ出命大サービス！
さらに、さらに・・・・」
猫「もうやめてー。
これ以上何をサービスしちゃうの？
見てられない。でも聞きたいわー！」
僕「今ならもう１来世。
今回お取引頂けた方に限り
来世でも同様のご契約をお約束します。
期限は今晩0時まで。
0時までのお取引限定ですよ！
そして限定商品となりますので
先着1名様のみのご案内となります。
お申し込みは今すぐに！」
猫「急がなきゃー。あれっ？主は？
おーい、こんなお得な取引ないっすよー？」
こんな感じで躊躇なく受け入れたい。
プロ、アマ、技術の巧拙に関わらず
音楽に心から魅了された人間であれば当然の選択だ。
どうせ音楽の助けなしでは生きてこれなかった。
Speakerが巻き散らす耳障りなノイズ。
か弱くも優しい、小さな美しい
メロディーがかき消されていく。
強面フェイスとドスの効いたデスヴォイスで
何度諫めようが止むことはない。
息苦しくってしょうがない。
酸素ボンベ替わりのイヤフォンが手放せない。
スイッチをONにすれば呼吸が安定する。
ヴォリュームを上げれば全身に血の気が巡る。
優しいオールディーズは
疲れ切った心に束の間の休息を与えてくれ、
シンプルな８ビートロックは
再びファイティングポーズをとらせてくれる。
本物の音楽に触れた時、
人は満点の笑顔と心からの涙を同時に
経験することができる。
音楽以上に心の琴線に触れるものを僕は知らない。
ほんの一時でも構わない。
望むような旋律の中で過ごす時間は
何物にも代え難い魅力を持つ。
ただ一つ残念なのは既に27clubの
入会資格を失っていること。
それに取引してもしなくても、
今までしてきた悪事を考えれば
白い羽の天使が迎えに来るとも思えない。
黒い羽に尻尾つき、そんな女がお似合いだ。
どちらかと言えばそっちの方がタイプかな？
まあ、考えてみりゃ女の子はみんな小悪魔か。
「今ならなんと先着1名様に
残りの人生すべてを捧げます！
お申し込みはお早めに！」
最低のプロポーズだな。猛省。
