そして僕もいなくなった  ~青空を口ずさみながら~

 

 

 

年明けから続いている職場のトラブル。

事態の収束に向け、上役と対策に奔走。

当事者への対応について上層部との意見が

食い違い、延々と続く無駄な会議。

 

 

 

 

会議は踊る、されど進まず。

ここまできたら夜通し踊り明かそう。

どうせだったら陽気にツイスト。

アホしかいないんだ、踊らにゃ損損。

 

 

 

 

要は職場内人間関係の問題。

平たく言えばイジメに近い派閥闘争。

内容はとても幼稚。辟易する。

一人の人間を多勢が非難、そんなとこ。

 

 

 

 

個人的には群れることが嫌いだ。

同調圧力に屈する人間は信用できないし

何より経験上、面白くないヤツが多い。

あと単純にメンドクサイ。

 

 

 

 

個人的主観はさておき、1対多勢の構図は

それ自体がひどく醜悪な光景に感じる。

例え、1の存在が間違っていたとしてもだ。

何故に1に対し先陣を切った人に委ねないのか?

 

 

 

 

過剰な正義感の上積みは時として悪に転ずる。

悪を叩くカタルシスに酔い、己の義侠心が

黒く染まっていくことに気が付かぬのだ。

多勢に身を置く人間に聞いてみたい。

 

 

 

 

 

「自分が多勢から攻められたらどう思う?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

卒論研究、バイト×3、飲み会・・・

多忙な日常の中、就活に煮詰まり、

何度書いたか解らぬ履歴書を

徹夜にて完成させる。

 

 

 

 

期限ギリギリに書き終えた履歴書を小脇に

最寄りの郵便局まで朝一に出かける。

夜通し吸い続けたタバコのせいか

爽やかな朝の空気でさえ、肺を絞めつける。

 

 

 

 

その小さな郵便局には

朝早くから受付開始を待ち、

窓口には長蛇の列が並んでいた。

猛烈に襲い来る睡魔と闘いながら僕も並ぶ。

 

 

 

 

 

大きな欠伸を一つこらえた頃に、

僕の後ろに二人組のオッサンが並んだ。

パンチ、金ネックレス、色付きグラス

ドレスシャツに雪駄。小脇にセカンドバック。

 

 

 

 

テンプレ・チンピラの兄貴分と思わしき男は

室内だというのにタバコに火をつけ吹かし出す。

列に並んだ人々は怪訝そうな表情にて

オッサンをチラ見していた。

 

 

 

 

「いやー兄ちゃん、やっぱお役所仕事は

 ダメだな。随分と待たせやがる。」

チンピラAは前に並んでいた僕に対し

親しみを込めて話しかけてきた。

 

 

 

 

きっとシンパシーを感じ取ったのだろう、

同じダメ人間としての。

だがしかし、オッサンには申し訳ないが、

シンパシーとか好きじゃないんだ。

新橋のガード下だったら好きだけど。

 

 

 

 

「知らんがな、んなこたぁ。

 どうでもいいからタバコ消せよ、煙いんだ。」

僕の口をついて出た言葉がこれ。

まったくどっちがチンピラなんだかね。

 

 

 

 

僕を知る人間ならきっとこう突っ込むだろう。

「どの口が言うんだ、このヘビースモーカーが!」

 

 

 

 

ここではっきりと断っておく。

この発言は正義感や義侠心から

発せられたものではない。

僕はそんな正しい人間ではない、むしろ悪。

 

 

 

 

1)徹夜でタバコ吸いすぎ肺が痛い。

2)バイトの反動で愛想笑いするのが辛い。

3)シャイな気質からくるツンデレ的発言。

上記3つが発言の原因、一言でいえばエゴ。

 

 

 

 

もともと希死念慮が強いことや

頭のネジを1ダース程、母の胎内に

忘れてきたこともあり、相手が誰だろうが

知ったこっちゃない、殺るなら殺らんかい、

そんなスタンスで生きていることも要因。

 

 

 

 

 

オッサンは予想外の返しに唖然としていた。

怒りを感じることさえも忘れ。

我に返りその形相に憤怒の色が浮かび始めた

その瞬間であった、事件が起こったのは。

 

 

 

僕の前に並んでいた人々が堰を切った様に

オッサン達を捲し立て始めたのだ。

 

 

「そうだ、そうだ。」

「禁煙って読めないの?」

「さっさと出て行けよ!」

 

 

列を崩してまで二人組を輪になって取り囲み

正論という名の言葉のリンチを続けていた。

さすがのオッサン達もどうしたらいいのか

分からない様子、張り続ける虚勢も弱々しい。

 

 

 

 

その光景を見た瞬間、妙に冷めた気分になり

「あの~・・・」僕は切り出した。

問題の発端である僕の発言に視線が集まる。

「並ばないんだったら僕、先に受付いいですか?」

 

 

 

 

周囲の人、ポカン。

オッサン二人も当然、ポカン。

「速達ですね、320円になります。」

郵便局員、スタンプをペタン。

 

 

 

 

受付を終えると固まったまま

動けないでいる局内の人々を残し、

自動ドアを抜け外に出た。見上げると

初夏の日差しが水色によく映えていた。

 

 

 

 

THE BLUE HEARTSの青空が

どこからともなく聞こえた気がした。

耳慣れたフレーズを口ずさみながら

ゆっくりと家路を辿る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの場所に、正しい人間は

唯の一人もいなかった気がする。

原因を作った当人が言うのも

変な話だとは思うけれど。

 

 

 

 

オッサンはマナーを守らなかった。

僕も言い方を気を付ければ

穏便にあの場を丸く収めることが

出来たのにそれを怠った、いや、しなかった。

 

 

 

 

周囲の人々は僕より早く不快感を

示したのにそれを行動に移さなかった、

そればかりか多勢にて一人の人間を

叩くという行為に自発的に参加した。

 

 

 

 

発信者という責任を放棄したのに

首謀者という陰に隠れ、よってたかって

立場の弱くなった一人の人間に対し

自分の正義感を叩きつけていた。

 

 

 

 

本当の意味でマナーを守らなかったのは

どっちなんだろう?張り紙に書かれてた

ルールではなく、人としてのマナーをね。

 

 

 

 

あっ訂正。正しい人間一人だけいたわ。

郵便局員のお兄さん、淡々と仕事した。

彼、正解。あと帰りに買ったイカフライ弁当

商品化した人。あれ、美味すぎ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまあ、こんな感じのゴタゴタが続いて

尻ぬぐいに気力がゴリゴリ削られて、

無駄文書く力が枯渇していた訳ですよ。

しばらくは後引きそうな感じでゲンナリ

 

 

何か久しぶりに書いてすっきりしたものの

何が言いたいのか解らぬ文章になっちゃた。

 

 

要はね、このゴタゴタのせいで有耶無耶に

なった僕の有給消化をどうしてくれんだ?

ってことですよ、そう、ただの愚痴。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の休みはバスに乗って旅にでも出るか。

行先はもちろん、どこでもいい。

・・・・・日帰り圏内なら。

  ~THE 社畜 HEARTS〜


 

 

 

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