-30-

「終わりよければすべて良し」

逆もまた真なり。

「終わり悪けりゃすべて台無し」

裏?対偶?細かいことはどうでもいい。

 

 

 

 

大切なことは良いエンディングを

迎えられるか否か?

Happ Endに越したことはないが、

それだけがGood Endとは限らない。

 

 

 

 

悲しみや寂しさを孕んでいる結末だとしても

暖かさや明日への希望を同時に内包している、

そんな美しいエンディングもあるってもんだ。

「終末の時に何を求めるか?」

良いラストシーンとは結局それ次第、その人次第。

 

 

 

 

 

「有終の美」「立つ鳥跡を濁さず」

終わりの美学というものは昔から唱えられてきた。

何も臨終の時に限った話ではない。

人は生きていく中で様々な終わりの場面に遭遇する。

 

 

 

 

卒業、退職、別離、解散・・・・

その刻を共に過ごした人がどう思っていたか

知る由もないが、思い出深い最期もあれば、

記憶の片隅にも残らない、そんな日もあった。

 

 

 

 

様々なステージにおける最期の時において、

忘れられない最も印象深いラストシーンは 

 HappyでもなくGoodでもないEnd。

でも一番「らしい」終わり方だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学生生活終わりの卒業旅行、4人はバラバラだった。

 

 

4年間の中で一緒に過ごしたのは2年間だけ。

いざこざやわだかまりが横たわり、

卒業までの期間、個々人での関わりはあったものの

皆が一同に会することはなかった。

 

 

進学、就職、留年、退学。進路もそれぞれ。

顔を突き合わすのもこれで最後だ、

色々あったがお互いの船出を称えよう、

そんな思いからまとめ役の僕が声をかけた。

 

 

たった一泊だけの卒業旅行。

それくらいがあの時の関係性を考慮すれば

ちょうど良いと思っていた。実際のとこ、

行きの車中ではお互いを労ってるのか探ってるのか、

区別のつかぬよそよそしい会話が続き

船出を前にして早くも後悔の嵐、先行き不安。

 

 

目的地である冬山近くのロッジにて雪の中、

バーベキュー、花火、焚火を囲み思い出話。

徐々に固さが取れた笑い声がちらほら。

ぎこちなさが無かったと言えば嘘になるが

少しだけあの頃の僕らに戻れた気がした。

 

 

 一夜を共に過ごしたおかげか、

帰路に就く解放感からか帰りの車中は

和やかな雰囲気に満ち溢れていた。

くだらない冗談や馬鹿話に花を咲かせる。

 

 

僕らの街に戻り、ファミレスで

最後の晩餐を楽しむ。4人の心の中に

わだかまりという名のユダはもういなかった。

しかし、神は見過ごさなかったようだ。

 

 

仲違いの罰をたった一夜で拭いさる、

僕たち色々あったけど、新天地でもがんばれよ。

予定調和の綺麗な結末で締めくくられた脚本は、

運命の悪戯により、いとも容易く書き換えられた。

 

 

 一人一人家まで送っていくその道中で事件は起きた。

時刻は深夜1時。歩道に若い女性が横たわっていた。

念のため路肩に車を止め、車中から様子を窺うも

動き出す様子がない。

 

 

まさか死んでる?慌てて4人は車を降り駆けつける。

声をかけたものの返答は酩酊しており意識朦朧。

外気は氷点下を下回る。このまま放置すれば

パトラッシュるのは明白。急いで119にコール。

 

 

家が近かったヤツに毛布を取りに行かせ、

残ったものは声がけを行い救急車の到着を待つ。

つい先刻までのお別れ気分は何処へやら、

コード・ブルーの舞台に無理やり引きづりこまれた。

 

 

救急車が到着すると隊員に事情を説明し

後のことを託す。とは言え、見届けたい気持ちが

優先し事の顛末を遠目に眺めていた。

そこからが修羅場。

 

 

隊員が声がけを行うと女性はよろけながらも

立ち上がり喚き散らす、千鳥足ながらも

逃げ出そうと暴れる。酒か薬か判らないが

完全にラリっている様子だった。

 

 

救急隊だけでは事足りず、警察まで出動する騒ぎに。

パトカー2台が到着。それを見て裸足で逃げ出す女性。

財布を忘れた様子もないし、お魚咥えたドラ猫もなし。

 

 

この光景には4人ともドン引きしてしまった。

あそこまでラリッている人を間近でみたことは

なかったのでショックを受けてしまった。

結構な美人が錯乱しているのは想像以上にキツイ。

 

 

 「お互い、これからがんばろうな。」

「来年も皆で集まろうぜ。」

そんな言葉を交わし握手やハグで

笑顔のお別れをする予定であったはずだった。

 

 

 冷めきった場の空気感と冷え切った体温、

ショッキングな光景に疲れ切った4人の心。

そんな状況が僕に言わせた言葉は

「じゃあ、お疲れ。解散。」

 

 

「お疲れ。」

4人とも頷き、この一言で僕らは別れた。

ある意味僕らの心は一つになっていたのだろう。

 

 

もし、僕らの関係性が強固なものであったら

「台無しだったな、もう1回やり直そうぜ。」

そんな話も出てきていたことだろう。でも、

誰の口からもその言葉が発せられることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わりよければすべて良し」

 

言葉を額面通りに受け取ってはいけない。

最高のラストを飾る必要条件は

それまでのプロセスを大切に過ごすこと。

伏線があるからこそ粋な最期を迎えられる。

 

 

 

 

これまでの人生で満足に値するラストシーンを

迎えることが出来たのは残念ながらホンの一握り。

大半はBad Ending、エンドロールのBGMは

シナトラじゃなくシドver。

 

 

 

 

Good for nothing, Not Good enough.

今のところはそんなMy Way。

カーテンコールもアンコールも必要ない。

 finに代わって-30-と記す、

せめてこれくらいの洒落っ気はね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで退職希望を未だ言い出せぬまま

過ごしている毎日。時期も未定であり

現実的な状況を考えると、すぐにでも

という訳にはいかず、ズルズルと今に至る。

 

 

 

 

っとここまでは只の建前。本当のところ、

退職を望んでいる理由の5割を占めているのが

「三つ編みできるくらい髭を伸ばしたいから」注)1

こんな理由であるからこそ。・・・言えないよね?

 

 

 

 

 

 

 

注)1 ”Leo Moracchioli” の影響。

久々にぶっ刺さり、すっかり感化されてしまった。 

原曲へのリスペクト、アレンジ、スタイル、

ユーモアセンス、すべてにおいて最高。

何よりすごく楽しそう。あと、お髭がすごいセクシー。

Last Christmasのカバーが秀逸。

 

 

 

 

 

 

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